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ライドシェアって何?2024年4月スタートの『日本版ライドシェア』を解説

2024年4月から「自家用車活用事業」が始まり、日本版ライドシェアがスタートしました。ニュースなどでも話題になっていますが、現役のタクシードライバーや、これからタクシードライバーを目指す方は特に気になるテーマなのではないでしょうか。

ライドシェアは一般のドライバーが有償で乗客を乗せて走るサービスです。「Ride(乗る)ことをShare(共有)する」という意味があります。今回は、まだ始まったばかりのライドシェアについて解説していきます。

運行はタクシー会社 二種免許なしの一般ドライバーが運転

ライドシェアの仕組みと日本での変遷

ライドシェアは、アプリ上などで一般ドライバーと利用者をマッチングさせ、一般ドライバーの自家用車を使って目的地まで移動します。海外では1970年代から相乗り(カープール)サービスなどが行われていましたが、1990年代からインターネット上のサービスに移行。2009年にはアメリカ・カリフォルニア州にデリバリーなどで有名なUberが設立され、配車サービスを開始しました。

こうしたライドシェアサービスについては、正規のタクシー会社による訴訟や安全面の問題などから、各国で“ライドシェア議論”を巻き起こしました。フランスやドイツ、オランダ、ルーマニア、韓国、タイなどの国ではライドシェアサービスが一度取り入れられたものの、現在は禁止されています。一方で、アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ、メキシコ、中国、チリ、スイスなどの国ではライドシェアを制度化しています。先述のUberを始め、アメリカのLyft、中国の配車サービス最大手のDiDi、シンガポールのGrabなどがライドシェアを展開しています。

これまで、ライドシェアが違法な“白タク行為”に該当するとされてきた日本では、タクシーサービスのみ運用してきました。しかし日本独自の制度として、「自家用有償旅客運送」が2006年に整備されました。これは、公共交通空白地などで「条件付きで自家用車による運送を認めるもの」で、自治体などの運営・管理下のもと、営利性を排除する形で運用されてきました。

2023年になるとタクシーの供給不足などを背景に、菅義偉前首相がライドシェア解禁に向けた議論の必要性に言及。規制改革担当大臣の河野太郎氏もこれに同調し、一気にライドシェア議論が再燃しました。

その結果、2024年4月に「自家用車活用事業」が新たな制度としてスタート。「国土交通大臣の許可を受けて地域又は期間を限定して運送の用に供するとき」は、タクシーが不足する地域や時間帯に、「地域の自家用車や一般ドライバーを活用して有償運送」ができるようになりました。

日本版ライドシェアの特徴

日本版ライドシェアは、民間企業が展開する海外のライドシェアとは異なり、現在は日本交通株式会社など「国土交通省から営業を許可されたタクシー会社」が運行管理を行っています。

2024年4月現在、東京23区と武蔵野市、三鷹市、神奈川県内の一部地域(横浜市、川崎市など)と、愛知県内の一部地域(名古屋市、瀬戸市など)、京都府の一部地域(京都市、宇治市など)で順次開始されています。今後、北海道・札幌市、宮城・仙台市、千葉交通圏内、大阪市域交通圏、神戸市域交通圏、広島交通圏内、福岡交通圏内でも順次サービスが開始される予定です。

ライドシェアのドライバーは、自動車運転免許を取得して1年以上経過している「一般ドライバー」です。タクシードライバーのような二種免許を保有するプロドライバーとは異なります。運行はタクシー会社が行っているものの、タクシードライバーのようにタクシー会社の制服を着用することはなく、私服で運転します。さらに車両も営業車両ではなく、白ナンバーの自家用車区分扱いとなります。ただし、「ライドシェア車両」であることを識別するため、フロントガラス部分に「GOライドシェア」という表示灯を設置します。

乗客は、タクシーアプリ『GO』を使ってライドシェアを配車します。運賃はタクシー料金と同じで、『GO』での配車時に事前に運賃を算定し、注文前に経路や運賃を確定します。車内には領収書発行機器は設置されていないため、タクシー車内で紙の領収書を発行することはできません。またライドシェア車両は、通常のタクシーのように街中で手を挙げて乗車することはできません。さらに、ライドシェア車両にはタクシーのような自動ドアはないため、乗客は自身で開け閉めする必要があります。

日本でのライドシェアの展開

現在はタクシー会社が運行を行い、『GO』で配車する日本版ライドシェアですが、民間企業もサービス展開に動き始めています。

配車アプリとして有名な『S.RIDE』も4月中に、国際自動車と大和自動車交通による自家用車活用事業の運行車両への配車を、東京23区と武蔵野市、三鷹市で開始。今後、順次拡大することを発表しています。

また大手広告代理店・博報堂は、地域の移動課題解決に向けたMaaSソリューションとして、富山県高岡市でマイカー乗り合い交通「ノッカル中田」の実証実験運行を2022年11月にスタートしています。これは、高岡市内の中田地区を行き来するドライバーの車に、移動したい乗客が乗り合うサービスです。利用者はドライバーの走行予定を見て、前日までに電話かLINEで予約し、ドライバーの車に乗せてもらいます。ドライバーは2種免許保有者か、国土交通大臣認定講習を受講した地区住民が担い、料金は片道500円と設定されています。その後も、静岡県や山形県で運行を開始しています。

その他にも、ソフトウェア企業の株式会社パブリックテクノロジーズや、JR西日本などが、ライドシェア事業に乗り出しています。

ライドシェアのメリットと課題

ライドシェアは、利用者にとっては「マッチングすればすぐに乗車できる」という点で、タクシー以外の選択肢を増やすことができます。またドライバーは二種免許を必要とせず、自身の資産(車両)を使って収入を得ることができるため、「新たな働き口の選択肢」となるでしょう。本業の合間の副業として、隙間時間にライドシェアドライバーを行う人も増えるかもしれません。

一方で、ライドシェアは海外でもこれまで、特に安全面から問題が発生し、廃止してきた国もあります。日本版ライドシェアはタクシー会社が運行していますが、安全面の強化や乗客への対応、またタクシー業界やタクシードライバーに今後与える影響なども注視していく必要があるでしょう。

今後も要チェックなライドシェア

今回は、日本版ライドシェアについてご紹介しました。タクシードライバーや、タクシードライバーを目指す方にとっては、タクシー会社が運行するライドシェアも気になるワードだったのではないでしょうか。

今後もライドシェアの最新情報や、タクシー会社の対応、展開について、最新情報をお伝えしていく予定です。

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